「トランスナショナルな世界」
            
            国家主義と国際主義とは、近代史における中心的なながれであるが、20世紀の
            半ばまでは、前者の勢いのほうが圧倒的に強く、国家間の紛争、闘争も後を絶た
            なかった。
            1970年代以降の約半世紀を現代だとすると、それ以前の時代と比べていくつか
            の特徴がある。
            第一に国境を越えたつながりが増大したこと。「インターナショナル(国際的)」から
            「トランスナショナル(超国家的)」な世界への転移を意味する。
            第二は、個人にとっても「非国家的」なアイデンティティー、例えば性別、年齢、人
            種といった要素が存在感を増していく。
            もちろん国家とか国境は依然として存在するが、それによって世界は分割される
            のではなく、トランスナショナルなつながりは強くなるばかりである。
            その最も重要な表れが人権の概念であろう。人権、すなわち人間の人間としての
            権利は、国籍とか性別とか宗教の差異などとは別に普遍的なものである。
            多数の人達が、国家観の相違よりは、人間としての共通意識を抱いているのだ、
            ということを示す。人権意識に基づくグローバル・コミュニティ、それが現代の国際
            主義の根底にある。 
                  (「国家中心主義の終わり」 入江 昭 中国新聞2017.8.29)